技能実習制度の畜産農業に関するご説明ページ
About accepting livestock farming technical intern trainees

畜産農業で外国人技能実習生の受け入れを考えるとき、最初に確認すべきことがあります。
それは、すべての畜産業が同じように技能実習の対象になるわけではない、という点です。
技能実習の畜産農業で中心になるのは、主に次の3つです。
・養豚
・養鶏
・酪農
豚を育てる養豚、鶏を育てる養鶏、乳牛を飼育して生乳を生産する酪農は、技能実習の畜産農業として受け入れを検討しやすい分野です。
一方で、和牛などの肉用牛肥育、養蜂、羊、山羊などは、技能実習の畜産農業として長期受け入れを考える場合に注意が必要です。
「うちは畜産だから大丈夫だろう」と考えて進めてしまうと、あとから実習計画が合わない、2号・3号へ進めない、ということが起こる可能性があります。
この記事では、畜産農業で技能実習生を受け入れたい農家・農業法人向けに、対象になる作業、仕事内容、注意点、受け入れ前に確認すべきポイントをわかりやすく解説します。

畜産農業といっても、現場の仕事はかなり違います。
豚を育てる農場と、卵を生産する養鶏場と、乳牛を搾乳する酪農では、作業時間も、必要な知識も、注意すべきリスクも違います。
まずは、自社がどの作業に近いのかを整理しましょう。
養豚は、豚を育てて出荷する仕事です。
繁殖から肥育まで一貫して行う農場もあれば、母豚の管理を中心にする農場、子豚を育てる農場、肥育を中心にする農場もあります。
主な作業は、給餌、給水、豚舎の清掃、健康観察、分娩補助、子豚の管理、出荷準備などです。
養鶏は、鶏を育てる仕事です。
採卵鶏であれば卵の生産、ブロイラーであれば食肉用鶏の飼育が中心になります。
主な作業は、給餌、給水、鶏舎の環境管理、集卵、選別、鶏の健康観察、鶏舎の清掃・消毒、出荷準備などです。
地鶏や銘柄鶏を扱っている場合は、実際の作業内容が技能実習の養鶏作業として認められるか、監理団体に確認してから進める必要があります。
酪農は、乳牛を飼育し、生乳を生産する仕事です。
主な作業は、給餌、給水、牛舎の清掃、搾乳、搾乳機械の洗浄、乳牛の健康観察、子牛の管理、分娩補助などです。
同じ牛を扱う仕事でも、和牛などの肉用牛を肥育する仕事とは区別して考える必要があります。

畜産農業の技能実習で特に大切なのは、実習生に何を学んでもらうかです。
畜産農業の中心は、単なる出荷作業や清掃作業ではありません。
中心になるのは、家畜を毎日観察し、健康な状態で育てるための「飼養管理」です。
飼養管理とは、簡単にいうと、家畜を育てるための日々の管理のことです。
たとえば、次のような作業が含まれます。
・えさを与える
・水を確認する
・畜舎や鶏舎の温度、湿度、換気を管理する
・家畜の様子を見る
・病気や異常を早めに見つける
・清掃や消毒を行う
・成長段階に合わせて管理方法を変える
つまり、「作業を手伝ってもらう」というより、家畜の状態を見ながら育てる技術を教えることが重要です。
集卵だけ、出荷だけ、清掃だけ、運搬だけという形では、技能実習として不十分になる可能性があります。
養豚では、豚の成長段階に合わせた管理が必要です。
哺乳中の子豚、離乳後の子豚、肥育豚、母豚、種豚では、それぞれ管理のしかたが違います。
実習生に任せる仕事としては、次のようなものがあります。
・給餌、給水
・豚舎の清掃
・豚舎内の温度や換気の確認
・子豚の健康観察
・母豚の分娩前後の管理補助
・肥育豚の成長確認
・出荷前の準備
・消毒作業
・防疫衣や長靴の管理
養豚で特に重要なのは、防疫です。
豚熱やアフリカ豚熱などの家畜伝染病は、発生すれば農場経営に大きな影響を与えます。
そのため、実習生には初日から防疫ルールを教える必要があります。
「この豚舎に入る前は必ず長靴を替える」
「外部の人と接触した服では入らない」
「消毒槽をまたがない」
「体調の悪い豚を見つけたらすぐ報告する」
こうしたルールは、日本人スタッフにとって当たり前でも、実習生には伝えなければわかりません。
母国語のマニュアル、写真付きの掲示、作業前の確認を用意しておくと、事故や違反を防ぎやすくなります。
養鶏は、採卵鶏とブロイラーで作業内容が変わります。
採卵鶏では、卵を安定して生産するための管理が中心です。ブロイラーでは、出荷までの短い期間で健康に育てる管理が重要になります。
実習生に任せる仕事としては、次のようなものがあります。
・給餌、給水
・鶏舎内の温度、湿度、換気の確認
・鶏の健康観察
・集卵
・卵の選別、包装
・鶏舎の清掃、消毒
・出荷準備
・防疫衣、マスク、長靴の管理
養鶏で特に注意したいのは、高病原性鳥インフルエンザです。
鳥インフルエンザは、発生すると農場全体に大きな影響が出ます。野鳥や野生動物の侵入を防ぐこと、外部から病原体を持ち込まないことが重要です。
実習生には、鶏舎に入る前後の消毒、着替え、手洗い、立入禁止区域、異常な鶏を見つけたときの報告方法を、具体的に教える必要があります。
また、鶏舎内は粉じんやアンモニア臭が強くなることがあります。マスクの着用、換気、休憩、体調確認も大切です
酪農は、365日続く仕事です。
乳牛は毎日搾乳が必要で、朝夕の作業が基本になる農場も多くあります。搾乳ロボットを導入している農場でも、牛の健康確認や機械の確認は欠かせません。
実習生に任せる仕事としては、次のようなものがあります。
・給餌、給水
・牛舎の清掃
・敷料の交換
・搾乳準備
・搾乳機の装着補助
・搾乳後の洗浄
・生乳の冷却、出荷準備
・子牛の哺乳
・乳牛の健康観察
・分娩前後の補助
酪農で特に重要なのは、労務管理です。
朝が早い、夜の作業がある、休日を取りにくい、という特徴があるため、技能実習生に過度な負担がかからないようにしなければなりません。
農業には労働時間・休憩・休日に関する特例がありますが、それを理由に長時間労働を当然のように続けてよいわけではありません。
受け入れ前に、次の点を整理しておくことが大切です。
・誰が朝の搾乳を担当するのか
・休日はどう回すのか
・夜間対応が必要な場合、誰が見るのか
・残業時間をどう記録するのか
・日本人従業員と同等以上の待遇になっているか
酪農は、人手が足りないから受け入れるのではなく、実習生が無理なく技術を学べる体制を作ってから受け入れることが重要です。
養豚、養鶏、酪農に共通して必要なのが、安全教育です。
畜産の現場では、次のようなリスクがあります。
・家畜に蹴られる、押される
・機械に巻き込まれる
・床で滑って転倒する
・消毒薬や薬剤を誤って扱う
・粉じんやアンモニアを吸い込む
・重い飼料や資材を持って腰を痛める
・感染症や家畜伝染病のリスクがある
特に酪農では大型の牛を扱うため、立つ位置や逃げ道の確保が重要です。養豚では豚舎内の動線、養鶏では鶏舎内の粉じんや機械設備に注意が必要です。
安全教育は、入社初日に一度説明して終わりではありません。
写真、動画、母国語資料、現場での実演を使いながら、繰り返し教えることが大切です。
畜産農業で技能実習生を受け入れるには、作業を教える人だけでなく、実習全体を管理する体制が必要です。
主に必要になるのは、次の3つの役割です。
技能実習全体を管理する人です。実習計画の進行、監理団体との連絡、法令遵守、実習生の状況確認などを行います。
実習生に直接仕事を教える人です。養豚、養鶏、酪農の現場経験があり、作業手順や安全面を説明できる人が必要です。
実習生の生活を支える人です。住まい、買い物、病院、交通、地域での生活ルールなどをサポートします。
畜産の現場は、市街地から離れていることも少なくありません。住居、通勤手段、買い物、病院への行き方まで、受け入れ前に確認しておくと安心です。
畜産農業は、条件を満たせば第3号技能実習まで進めることができます。
第1号は1年目、第2号は2〜3年目、第3号は4〜5年目にあたります。
つまり、うまく継続できれば最長5年間の受け入れが可能です。
ただし、第3号まで進めるには、実習生本人の試験合格だけでなく、受け入れ側や監理団体にも要件があります。
特に確認すべきなのが、監理団体の許可種別です。
第3号まで考える場合は、一般監理事業に対応している監理団体かどうかを確認しましょう。
長期的に育てたい場合は、最初の契約前に「3号まで対応できるか」「特定技能への移行まで相談できるか」を聞いておくことが大切です。
畜産農業で技能実習を良好に修了した場合、特定技能「農業」への移行を検討できます。
特定技能へ移行できれば、技能実習よりも長く働いてもらえる可能性があります。
特に、畜産は仕事を覚えるまでに時間がかかる分野です。
防疫ルール、家畜の観察、機械の扱い、作業の段取りを理解した人材に長く働いてもらえることは、農場にとって大きなメリットになります。
技能実習だけで終わらせるのではなく、最初から特定技能への移行も見据えて育成していくと、採用計画が立てやすくなります。
技能実習制度は、2027年4月1日から育成就労制度へ切り替わる予定です。
ただし、施行日前に技能実習計画の認定や申請が進んでいる場合には、経過措置の対象になる可能性があります。
そのため、2026年以降に畜産農業で受け入れを考える場合は、次の点を確認しておきましょう。
・現行の技能実習制度で受け入れるのか
・育成就労制度を見据えて準備するのか
・監理団体が制度変更に対応する予定か
・現在受け入れている実習生に影響があるか
・特定技能への移行も含めて計画するか
育成就労制度については、今後も運用の詳細が更新される可能性があります。最新情報は、外国人技能実習機構、出入国在留管理庁、厚生労働省、農林水産省などの公式情報を確認してください。

和牛などの肉用牛肥育は、技能実習の畜産農業として長期受け入れを考える場合に注意が必要です。酪農とは作業内容が異なるため、技能実習2号・3号へ進める対象かどうかを監理団体に確認してください。長期雇用を考える場合は、特定技能「農業」の活用も検討しましょう。
一律に判断せず、実際の作業内容が技能実習の養鶏作業として計画できるかを確認する必要があります。採卵鶏やブロイラーとは飼育方法や出荷形態が違う場合もあるため、監理団体に具体的な作業内容を伝えて確認しましょう。
集卵や出荷作業だけを中心にするのは避けるべきです。技能実習では、家畜を育てるための飼養管理を学ぶことが大切です。給餌、給水、健康観察、畜舎管理、清掃・消毒などを含めた実習計画にする必要があります。
受け入れ時に選ぶ作業が重要です。養豚で受け入れるなら養豚の飼養管理、養鶏で受け入れるなら養鶏の飼養管理が中心になります。別作業を混ぜすぎると実習計画と合わなくなる可能性があるため、事前に監理団体へ確認してください。
必要な作業として行うことはありますが、労働時間、休憩、休日、残業代の管理が重要です。農業の特例がある場合でも、過重労働や不適切な待遇は認められません。シフト表と労働時間の記録を必ず整えましょう。
必ず教える必要があります。養豚、養鶏、酪農では、防疫ルールを守れるかどうかが農場経営に直結します。母国語の資料、写真付きの掲示、現場での実演を使い、入場ルール、消毒、着替え、異常時の報告方法を繰り返し教えましょう。
技能実習を良好に修了した場合、特定技能「農業」への移行を検討できます。畜産農業は仕事を覚えるまでに時間がかかるため、最初から特定技能への移行も見据えて育成計画を作るとよいでしょう。

技能実習の畜産農業で中心になるのは、養豚・養鶏・酪農です。
養豚は、豚の成長段階に合わせた飼養管理と防疫対策が重要です。
養鶏は、採卵鶏やブロイラーの飼育管理に加え、鳥インフルエンザ対策が欠かせません。
酪農は、搾乳を中心に365日続く仕事のため、技術指導だけでなく労務管理も重要になります。
畜産農業で受け入れるときに特に大切なのは、次の3つです。
・自社の畜産が技能実習の対象作業に合うか確認すること
・出荷や清掃だけでなく、飼養管理を中心に実習計画を作ること
・家畜伝染病対策と労務管理を受け入れ前に整えること
畜産は、家畜の命を扱う仕事です。
だからこそ、単なる人手不足対策として受け入れるのではなく、技術を教え、防疫を守り、安心して働ける体制を作ることが大切です。
2027年4月からは育成就労制度への切り替えも予定されています。これから受け入れを考える農家・農業法人は、現行の技能実習制度だけでなく、制度変更後の対応や特定技能への移行も含めて、早めに監理団体へ相談しておきましょう。
参考情報:外国人技能実習機構、厚生労働省、農林水産省、出入国在留管理庁、JITCO等の公表情報をもとに作成。