寺本 篤生
TERAMOTO
組合理事

顧問

寺本 篤生

長年経営の現場に身を置く中で、日本の労働環境は大きく様変わりしました。かつて日本は世界中から人が集まる「来れば人生が変わる国」でしたが、今は違います。アジア各国の経済が伸び、日本は「来てもらう側」に回りました。こちらから頭を下げてお願いする時代になったのです。この変化を直視しない限り、外国人材の受入れはうまくいきません。賃金、労働環境、生活支援、人としての扱い、将来への展望、そのすべてにおいて選ばれるに値する企業であることが求められます。制度の話ではなく、企業の覚悟の話です。顧問という立場から、現場で組合を支える若い世代を見守りつつ、長年経営に携わってきた者として、伝えるべきことは率直に伝えていきたいと考えています。日本企業が本気で選ばれる側になれるかどうか。その分かれ目に、今私たちは立っています。

自己紹介 顧問:寺本

長年経営の現場に身を置きながら、日本の労働環境がこの数十年でどう変わってきたかを見てきました。かつては「日本に来れば人生が変わる」と、世界中から人が押し寄せてきた時代がありました。給与水準も、技術力も、社会の安定性も、アジアの中で群を抜いていた頃の話です。

今は違います。各国の経済成長は目覚ましく、わざわざ言葉の壁を越えて日本に来なくても、自国や他のアジア諸国でも十分な暮らしが成り立つようになりました。日本は「来てもらう側」になっています。「日本に来ませんか」「来てくれませんか」と、こちらから頭を下げてお願いする時代に変わったのです。

この変化を真正面から受け止めない限り、外国人材の受入れはうまくいきません。賃金、労働環境、生活のサポート、人としての扱い、そして将来への展望。すべてにおいて、選ばれるに値する企業であることを示さなければ、優秀な人材は来てくれないし、来ても定着しません。これは制度の話ではなく、企業の覚悟の話です。

組合の顧問という立場から、若い世代が現場で築き上げてきたこの組合を見守りつつ、長年経営に携わってきた者として、伝えるべきことは率直に伝えていきたいと考えています。日本企業がこれから本気で選ばれる側になれるかどうか。その分かれ目に、私たちは今立っているのだと思います。

Q1. この仕事を始めたきっかけは何ですか?

初めて研修生制度というものに出会ったとき、これは素晴らしい仕組みだと素直に思いました。当時はちょうど「アメリカンドリーム」という言葉が流行っていた頃で、世界中の若者たちが新天地で夢を叶えようとしていた時代です。日本にも同じように、夢を抱いた若者たちが集まってきていました。

そういう方々に、技術を学んで母国に持ち帰ってもらう、その過程で日本企業の現場も活性化される。両方にとって意味のある制度だと感じました。「日本に来て夢を叶えられる場所を、自分も一端を担って提供できる」、そう思えたことが、この仕事に関わるきっかけでした。

時代は変わりましたが、根っこにあるその気持ちは、今も自分の中で変わっていません。

Q2. 外国人雇用を検討している経営者の方々へ、メッセージをお願いします。

一つだけ、最初に申し上げたいことがあります。

これからの企業経営において、労働力の確保はもっとも重大な課題になります。日本人の人口減少は止められません。AIやロボットの普及も、まだ現場の隅々まで行き渡っていません。その中で、企業として労働力を確保していくには、外国人材の力に頼っていく以外に道はないと、私は考えています。

ただし、です。「人手が足りないから外国人を雇おう」という発想だけでは、もう通用しない時代になりました。外国人材の側にも選択肢があります。日本は今、「来てもらう立場」なのです。

どういう環境を整えるのか、どのように迎え入れるのか、来てくれた後にどう向き合うのか。この準備ができている企業だけが、これからの日本の未来に残っていきます。外国人雇用を経営戦略の中心に据えて、本気で取り組まれる企業様であれば、私たちも全力でお手伝いします。

Q3. 企業様をサポートする時に、最も心がけていることは何ですか?

顧問という立場から企業様に関わるとき、私が最も心がけているのは「経営者目線で本音をお伝えする」ということです。

私自身、長く経営の現場でやってきた人間です。だからこそ、外国人材の受入れを検討される経営者の方々が、何を考え、何に不安を感じ、どこで判断に迷うのか、ある程度肌感覚で分かります。組合のスタッフが現場の手続きや実務をサポートしてくれる中で、私の役割は、経営者と経営者として、本音で話をすることだと思っています。

具体的に心がけているのは、耳触りのいいことだけを言わない、ということです。「外国人材を入れれば人手不足は解決します」「すぐに戦力になります」、こんな安易な言葉は使いません。実際には、受入れには相応の準備が必要ですし、文化や言葉の違いを乗り越えるための忍耐も求められます。来てくださる方の人生の数年間を預かるという覚悟も必要です。これらを最初に率直にお伝えします。

その上で、それでもやりたい、腰を据えて取り組みたいと言ってくださる経営者の方には、長年の経営経験から見えてきたこと、外国人材の受入れで陥りやすい落とし穴、成功している企業の共通点などを、惜しまずお伝えします。

経営の判断は、最終的には経営者ご本人がするものです。私たちができるのは、判断するための材料を正確にお渡しすることだけです。だからこそ、楽観論も悲観論も交えず、現実をそのままお伝えする。これが顧問として一番大切にしていることです。

Q4. 外国人雇用について、どのように考えていますか?

外国人雇用は、もはや「特別な取り組み」ではなく、日本の経済社会を維持していくための「当たり前のこと」になりつつあると考えています。

人口減少が進む中で、日本人だけで産業を支えるのは現実的に難しくなっています。これは数字を見れば明らかです。ハローワークに求人を出しても応募がない職種が、現実にいくつもあります。日本人の雇用が奪われるという議論もありますが、現場の実態を見れば、外国人材なしには成り立たない業種がすでに存在しているのです。

その上で大切なのは、外国人材を「労働力の穴埋め」として扱わないことです。一人の独立した人間として、その方の人生の数年間を預かるという覚悟を持って受け入れる。この基本姿勢があるかないかで、結果はまったく変わります。

制度を使いこなすことより、人と向き合う覚悟を持つこと。これが私の基本的な考え方です。

Q5. 日本企業が外国人材を活用する上で、最も重要なことは何だと思いますか?

最も重要なのは、来てくれる側の立場に立って考えることです。

日本語というのは、世界の中でもかなり難易度の高い言語です。習得するには長い時間とお金と労力がかかります。だから、外国の若者が「働きに行く国」を選ぶとき、英語が通じる国を選ぶ傾向は当然あります。オーストラリア、カナダ、アメリカ、シンガポール、彼らにとっては英語が通じる国の方がハードルが低いのです。

日本は安全で生活水準も高いという強みはありますが、「言葉の壁」は決して軽くない問題です。この現実を踏まえた上で、それでも日本を選んでくださる方々のために、こちらが何を整えられるか。これが問われています。

賃金水準、住環境、日本語学習のサポート、職場での人間関係、将来のキャリアパス、すべてにおいて「来てよかった」と思っていただける環境を作る。これができる企業だけが、人材を確保し、定着させることができます。

時代は確実に変わっています。「来てもらう側」になった日本企業が、選ばれる側として何を提示できるか。そこに本気で向き合うことが、最も重要だと考えています。

Q6. 外国人雇用を成功させる企業と失敗する企業の違いは何だと思いますか?

成功する企業と失敗する企業の違いは、「来てくれる側の立場で考えられるかどうか」、この一点に尽きます。

成功する企業は、受入れの半年前から準備を始めます。住居を整え、指導担当者を決め、業務マニュアルを母国語にも対応させ、社内研修で「文化の違いとはこういうものだ」と日本人社員にも伝える。来日した時点で、受け入れる側の体制ができあがっています。

そして、来日後も継続的に向き合い続けます。困っていないか、悩んでいないか、定期的に声をかける。日本人社員と同じように評価し、責任ある仕事も任せる。「外国人だから」という線引きをしない。

失敗する企業は、これと逆のことをします。来日直前まで準備していない、住居も決まっていない、社内に話が通っていない。来日後も「外国人だから」という距離感が抜けない。本人はすぐにそれを察し、黙ってフェードアウトしていきます。

経営者の本気度が結果に現れる、それだけのことです。

Q7. この組合の、他にはない魅力や強みは何だと思いますか?

率直に申し上げると、この組合の強みは「正直であること」だと思っています。

派手なセールストークをせず、できないことをできると言わない。リスクや義務もきちんとお伝えする。耳触りのいい話だけして契約を取りに行くようなことはしません。この姿勢は事務局長の安松をはじめ、組合のスタッフ全員に共通しています。

長く経営をやってきて分かることですが、最初に都合のいいことばかり言われた取引先ほど、後でトラブルになります。逆に、最初に厳しいことも含めて率直に話してくれた相手とは、長く良い関係が続きます。この組合は、間違いなく後者です。

それからもう一つ、現場に足を運ぶ姿勢です。机に座って書類だけ見ているのではなく、企業様の現場に行き、外国人材本人と話し、送出し国にも足を運ぶ。手間のかかる仕事をきちんと積み重ねている。これは外から見ていて、誇らしく思う部分です。

派手さはありませんが、地味な仕事を地道に積み重ねている組合です。それこそが長い目で見て信頼に変わっていくのだと、私は信じています。

Q8. 顧問として、この組合にどのような形で貢献していきたいですか?

私の立場は、現場の最前線で動くことではありません。長年経営を見てきた者として、組合の進むべき方向性を外側から見守り、必要なときに率直な意見を述べる。それが私の役割だと思っています。

特に意識しているのは、組合が本筋を見失わないように見ていくということです。

監理団体や登録支援機関の仕事は、外から見れば収益事業に見えるかもしれませんが、本質は人と人をつなぐ仕事です。制度の趣旨を逸脱して儲けに走るような組織になれば、機構からも顧客からも信頼を失います。組合のスタッフは皆その本質を理解して動いていますが、組織が大きくなれば理念が薄れる瞬間は必ず来ます。そのときに「立ち止まって考えなさい」と言える人間が、外側に必要だと思っています。

それから、長年の経営経験から見えてきた「企業が陥りやすい落とし穴」を、組合員企業の経営者の方々に伝えていくこと。これも私にできる貢献だと考えています。受入れがうまくいかない企業には共通したパターンがあります。そのパターンを早めにお伝えして、回避していただく。これも一つの形だと思っています。

派手な貢献はできませんが、組合の屋台骨を支える一人として、静かに役割を果たしていきたいと考えています。

Q9. 座右の銘や、経営・人生で大切にしている考え方を教えてください。

「相手の立場で考える」、これが私が一番大切にしている考え方です。

事業をやっていれば、自分の都合、自社の利益、これを優先したくなる場面はいくらでもあります。でも、相手の立場で考えるという視点を一度通すと、判断がまったく違ってきます。お客様の立場、社員の立場、取引先の立場、家族の立場。それぞれの目線で同じ出来事を眺めてみる。経営判断に迷ったときは、必ずこれをやるようにしています。

外国人材の受入れに関わるようになって、この考え方の重要性をさらに痛感するようになりました。日本に来てくださる方々の立場、母国に残されたご家族の立場、送出機関の立場、すべての立場で考えられるかどうか。これができる経営者の周りには、自然と人が集まってきます。

それからもう一つ、「信用は時間をかけて積み上げ、失うのは一瞬」という言葉も、自分への戒めとして持ち続けています。事業の本質は信用だと、長くやればやるほど身に染みて感じます。一つひとつの判断、一つひとつの言動が、結局は信用を積むのか崩すのかのどちらかです。

地味な考え方ですが、これを愚直に続けることが、結局のところ近道だと思っています。

Q10. この組合が、今後どのような存在になっていってほしいですか?

二つ、願っていることがあります。

一つは、「派手ではないが、確実に信頼される組合」であり続けてほしいということです。

外国人材の受入れの業界には、残念ながら誇大な広告や不誠実な対応をする組織もあります。一時的にはそういう組織が伸びることもあるかもしれません。でも、長い目で見れば必ず淘汰されます。残るのは、地味でも誠実に仕事を続けてきた組織です。アジアネットワーク協同組合には、そういう組織であり続けてほしいと願っています。

もう一つは、「日本社会が外国人材と共に歩む未来」の一翼を担う存在であってほしいということです。

これからの日本は、好むと好まざるとに関わらず、多くの外国の方々と共に社会を作っていくことになります。労働力としてだけでなく、生活者として、家族として、地域社会の一員として、ともに歩んでいくことになります。その時に、企業の現場、地域の生活、家族との関わり、これらをどう設計するかが問われます。

組合は、企業様と外国人材の間に立つ存在として、両者の橋渡しをするだけでなく、地域社会や行政との架け橋にもなっていく必要があります。派手な拡大は望みません。一社一社、一人ひとりと丁寧に向き合いながら、確実に信頼を積み重ねていく。その積み重ねの先に、日本社会全体が外国人材を当たり前に受け入れられる成熟した社会があるのだと、私は信じています。

組合がその一翼を担い続けてくれることを、心から願っています。

顧問 寺本 篤生

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